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『闇も光も』。

夜の風。
マンションのエントランスを出たら、
道路の向こう、
自転車から降りたまま笑い合う若い男女。

恋人同士か。
それとも、その一歩手前か。

帰りたくなくて、
話を終わらせられなくて、
ほんの少しの沈黙のあと、次の話題を見つけるように
傍にある何の変哲もないブロック塀を指差し

また笑った。


夜なのに、光だけを見ていた。



気付けばいつの間にか、
タイトに上げた髪や
真っ赤なピンヒールが
こんなにも似合うようになっている。

知ってしまえば、
その深くを見たくなる。
手に入れてしまえば、
無くすことを人は恐れる。
触れてしまえば、
もっともっと味わいたくなる。
重ねてしまえば、
その全てを忘れられなくなる。

光の中の闇を見つけ、
闇の中で光を怖がる。

そうして、
求め合い
離れられなくなる。


見つめ合って
手を繋いで

そのぐらいの距離の方が、
本当はちょうど良いのかもしれない。

目や耳や
指先や舌
肌や内臓

全てに染み渡ってしまえば、

脳も心も身体も
それを覚えてしまうから。
明確に思い出してしまうから。


身体は記憶を引き起こすから。
記憶は痛みを引き起こすから。
心は穴が空いてしまうから。


双子のフレイムの置き忘れ
欠片を今、取り戻す


夜の蝶なんかじゃない。
夜の女なんかでもない。


私は、

たゆたう



そのもの。



黒い絹


緩やかな


夜、そのもの。



もうすぐ満月。


私はもう、

闇も光も受け入れる。
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